現代ジャズと呼ばれるものは、いずれも基本的には他ジャンルからの影響を受けたり融合したりといったものです。しかしよくよく考えてみれば、ジャズははじめからずっとそうでした。今となっては現代ジャズのくくりで取り上げられることは少ないブラン・ニュー・ヘヴィーズやジャミロクワイも、ジャズとソウル・ファンクの有機的な融合を目指した末に獲得したオリジナリティで名を上げました。
では何をもって現代ジャズと言うのか。それは、今も現役で進化し続けているアーティストがやっているものを現代ジャズと呼んでいるだけなのだと思います。
というわけで、現代ジャズと言われるものやそれらに影響を与えてきたもの、今も与えているものを、自分のしょぼい知識と好みからいくつか挙げてみたいと思います。
■伝統的なフォーマットの進化
様々な影響を感じさせながらも、ジャズの伝統的なフォーマットに軸足を乗せたまま進化を続けているグレッチェン・パーラートのコンボでの演奏です。
同曲をビッグバンドと演奏するとまた違った趣に。
…えええ…再生数少なすぎでしょこれ…
■ネオ・ソウル
現代ジャズの枠に入れるにしろその外に置くにしろ、無視できない大きな流れの一つがネオ・ソウルの流れです。エリカ・バドゥやディアンジェロ等に拓かれ、今現在も大きく進化の真っ最中です。
ハイエイタス・カイヨーテはその中でも今のってるバンドです。
ディアンジェロは90年代後半に興ったネオ・ソウルの流れを、エリカ・バドゥらとともに決定づけた重要なアーティストと言えます
今聞いてもカッコいいな~
■ヒップホップ
ヒップホップ・ミュージックというジャンルは詳しくないのですが、ジャズに似て貪欲に他ジャンルの要素を飲み込んで進化しているものと理解しています。ジャズとヒップホップ・ミュージックは互いを飲み込みあいながらまた進化していくのでしょう。
ロバート・グラスパーはとても分かりやすい形でヒップホップとジャズの相性が良いことを示しました。
この音源ではネオ・ソウルの女王とも呼ばれるエリカ・バドゥがボーカルをとっていますね
■ジャムバンド
ジャムバンドというとかつてロックに軸足を置いたものが多く人気を博していましたが、ジャム即ち即興演奏はそもそもジャズではその定義に内包されるくらい当然のものとしてありますので、当然互いに影響を与え合ってきました。
近年では、2016年にグラミー賞をとったスナーキー・パピーが大きく注目されています。
ボーカルに入ったレイラが重音唱法かました時のバンドメンバーの反応がもう最高
ジャムバンドといえば、日本でも、Yasei Collective等新世代のバンドが出てきています。
もうジャンルなんなんだか分かんないですね…大枠ではロックだとは思うんだけど…
■プログレ
これは正直まとめるのが難しいところなんですが、確実にあると思うので勝手にまとめてプログレとして載せてしまいます。
ティグラン・ハマシアンというアルメニアのピアニストなんですが、ジャズ・コンボのフォーマットでプログレッシブ・ロックやってるようなそんな感じです。
弾きながらジャンプしたり自由だなー
おなじみ上原ひろみ。あまりに評価されすぎて懐疑的な人も多い彼女ですが、プログレ界隈にもファンが多かったりします。
プログレっぽいのはサイモンフィリップスが叩いてるからだっていう人がよくいるんですが、そもそもデビュー作からプログレ感満載だったような…ほかに共演に選んでるのがスティーブ・スミスだったりするし…
■イスラエル
今やジャズの一大発信地となったイスラエルですが、独特のスケール感、タイム感、雰囲気、とても面白いです。
イスラエルのジャズを知らしめる立役者ともいえるベーシスト、アヴィシャイ・コーエンのトリオから。
ピアノを弾いているシャイ・マエストロもイスラエル出身で絶賛活躍中
クレズマーなどの伝統音楽からの影響を感じるエイモス・ホフマン。
■ブラジル
踊れる音楽サンバの産地ブラジルですが、60年代にはサンバを取り入れたジャズ・サンバの流行がありました。後に所謂クラブジャズで掘り起こされたまた流行ったりしています。躍らせる音楽としてのジャズとサンバの当然の融合です。また、ボサノヴァも流行と同時にジャズにしっかり融合しました。一方で現代の新たなジャズの流れとして、新世代のミュージシャンが新たな方向性を打ち出してきています。
現代ブラジル音楽で最も傑出した才能の一人とされるハファエル・マルチニのリリカルな演奏。
■ひとりオーケストラ
前述のハファエル・マルチニの動画でドラムに入っているアントニオ・ロウレイロは、「ひとりオーケストラ」の名手でもあります。技術の進歩によって録画録音から配信までが個人の手で手軽に出来るようになった結果、多くのひとりオーケストラミュージシャンが誕生しました。
その中でも今最も注目されている若い才能が、ジェイコブ・コリアーです。
ミュージシャンが見ると自信喪失すると評判(笑)
アントニオ・ロウレイロ。ジェイコブ同様、ボーカルも素敵。
■ビッグバンド、オーケストラ
ビッグバンドからそれ以上のオーケストラもまた現代ジャズの影響で変容しています。
現在につながる変革の流れを真っ先に拓いたマリア・シュナイダー。ジャズコンボでなされてきたような実験的な要素をどんどん持ち込みつつも、聞きづらいものにせず非常にきれいにまとめています。
ジャズオーケストレーションアレンジの最高峰ヴィンス・メンドーサが率いるメトロポール・オーケストラと、ロバート・グラスパー・エクスペリメントの共演
レイラ・ハサウェイも出てきますね。上のもこれもコンサート全編上がってるけど、いいんかこれ…
■ジャズ・ボーカリスト
今では、ジャズ・ボーカリストという枠は少なくなっていて、というのも殆どのボーカリストは楽器もできるし自身で作曲もするので、枠としては「シンガーソングライター」となっているから。ある意味で前述のひとりオーケストラに近い(おそらく、やろうと思えばひとりオーケストラだって出来るんだろう)
冒頭に上げたグレッチェン・パーラトやノラ・ジョーンズ以降の流れを汲んでいると評されるナタリア・マテオ。
ポストロック的な雰囲気も感じる
ベーシストとしての腕も世界トップレベルだけど、ここではボーカリストとしてここに上げちゃう。エスペランサ・スポルディング。
この人はもうほんと凄すぎて意味わかんねえ